御嶽山噴火から考える。山肌を変えた災害と、ひっそり傷ついた森林、そして復旧への道のり
2014年、御嶽山で発生した噴火災害は、私たちの記憶に深く刻まれる出来事となりました。多くの方が被害に遭われ、山の恐ろしさを改めて突きつけられました。
この噴火では、尊い命が失われただけでなく、山の姿そのものが大きく変わってしまいました。そして、山肌だけでなく、そこにあった広大な「森林」もまた、言葉にできないほど深い傷を負ったのです。
噴火によって焼き払われ、なぎ倒された木々。火山灰に覆われた大地。一瞬にして、長年かけて育まれてきた森の姿が失われてしまいました。
自然の力の前では、人間はあまりにも無力だと感じさせられます。しかし、悲しみや絶望の中でも、御嶽山の森林は少しずつ、そして着実に復旧・再生への道を歩んでいます。
この記事では、御嶽山噴火災害が森林にもたらした被害の実態と、そこから立ち上がるための人々の努力、そして森林が持つ驚くべき回復力についてお話ししたいと思います。自然災害と森林の関係を知り、未来へ豊かな自然を繋いでいくために、私たちに何ができるかを一緒に考えていきましょう。
あの日の御嶽山噴火…山肌だけでなく、大切な森林も大きな傷を負いました
火山噴火というと、噴煙や火山弾、火砕流といった現象を思い浮かべるかもしれません。しかし、これらの現象は、山の植物、特に森林にも甚大な被害をもたらします。
火山噴火が森林に直接もたらす被害
火山噴火による森林への被害は多岐にわたります。
- 焼失: 火山砕屑物(高温の噴石や火山灰)によって、木々が燃えてしまう。
- 倒壊・なぎ倒し: 爆風や土石流、なだれなどによって、木々が根元から折れたり、なぎ倒されたりする。
- 火山灰の堆積: 葉っぱに火山灰が積もり、光合成ができなくなったり、重みで枝が折れたりする。
- 有毒ガス: 火山ガスによって、木々が枯れてしまう。
御嶽山の森林で実際に起きたこと
御嶽山の噴火では、広い範囲で森林が被害を受けました。特に、噴火地点に近いエリアでは、熱風や噴石によって木々が焼かれたり、爆風でなぎ倒されたりしました。遠方でも、火山灰が積もり、木々が立ち枯れてしまうといった被害が発生しました。緑豊かだった山の斜面が、一瞬にして茶色や灰色に変わってしまったのです。
一瞬で姿を変えられてしまった山の様子
かつて登山客や観光客に親しまれていた御嶽山の美しい森林は、噴火によって無残な姿になってしまいました。倒れた木々が積み重なり、地面は火山灰に覆われ、静寂の中に痛ましい光景が広がっていました。自然の脅威をまざまざと見せつけられる光景でした。
森林が失われることの二次的な恐ろしさ
火山噴火による森林の被害は、その場だけの問題に留まりません。森林が持つ大切な機能が失われることで、二次的な災害を引き起こしたり、私たちの暮らしにも影響が出たりします。
木がないとどうなる? 土砂災害のリスク増大
森林の木々は、根っこで地面をしっかりと押さえつけています。しかし、木がなくなってしまうと、地面がむき出しになり、雨によって土が流れ出しやすくなります。これにより、土砂崩れや地滑りといった土砂災害が発生するリスクが大幅に高まります。特に、御嶽山のような急峻な山では、その危険性はより一層高まります。
水源涵養機能の低下…私たちの水にも影響が?
森林は「緑のダム」とも呼ばれ、雨水をゆっくりと地面に蓄え、時間をかけて川に流すことで、水を綺麗にし、水量を安定させる役割があります。森林が失われると、この水源涵養機能が低下し、雨水がそのまま地面を流れ落ちて濁流となったり、普段の川の水量が不安定になったりする可能性があります。これは、私たちの飲み水や農業、漁業にも影響を与える可能性があります。
生き物たちのすみかが奪われる…生態系への影響
森林は、様々な野生動物や植物にとって大切なすみかです。森林が破壊されると、そこに暮らしていた生き物たちはすみかを失い、絶滅の危機に瀕することもあります。生態系のバランスが崩れることは、長期的に見ても自然環境に深刻な影響を与えます。
困難な現場で続く、御嶽山の森林復旧・再生への長い道のり
甚大な被害を受けた御嶽山の森林を再び豊かな森に戻すためには、長い年月と多くの人の努力が必要です。林野庁や地元の自治体、そして多くの関係者が連携し、復旧・再生への取り組みが進められています。
復旧作業は危険と隣り合わせ
噴火後の山は、不安定な地盤や倒れた木々、そして二次災害のリスクなど、危険が潜んでいます。復旧作業に携わる方々は、常に危険と向き合いながら、慎重に作業を進めています。そのご尽力には、心からの敬意を表します。
倒れた木を片付け、地盤を安定させる初期段階
復旧の最初の段階は、危険な状態になっている倒木を処理し、崩れやすくなった斜面の地盤を安定させる作業です。これにより、新たな土砂災害を防ぎ、安全な作業環境を確保します。
未来へ繋ぐ一歩! 苗木を植える「植林」作業
地盤が安定したら、再び木を育てるための「植林」作業が行われます。御嶽山の環境に合った樹種を選び、苗木を一つ一つ丁寧に植えていきます。この小さな苗木が、未来の豊かな森へと成長していくのです。
山の斜面を強くする、砂防ダムや治山施設の役割
森林の回復には時間がかかります。それまでの間、土砂災害を防ぐために、砂防ダムや治山施設といった構造物が重要な役割を果たします。これらは、森林の回復と連携しながら、山崩れや土石流を防ぎ、下流域の安全を守ります。
復旧を支える人々の努力と地域住民の願い
これらの復旧作業には、林野庁の職員、地元の林業関係者、建設業者、そしてボランティアなど、多くの人々が関わっています。そして、何よりも地元に暮らす方々の、「ふるさとの山を、元の美しい姿に戻したい」という強い願いが、復旧の取り組みを支える大きな力となっています。
自然の力ってすごい! 森林が持つ「回復力」と「再生力」
御嶽山の森林は大きな被害を受けましたが、自然は決して諦めません。森林には、災害から回復しようとする、素晴らしい力があります。
何もせずとも自然が回復しようとする力
たとえ人の手が入らなくても、自然は時間とともに少しずつ回復していきます。風で運ばれてきた種子が芽を出したり、生き残った植物が再び成長したり。そこには、自然の生命力の強さを感じさせられます。
人の手による適切なサポートで、回復を加速させる
人の手による植林や適切な管理は、自然の回復力をサポートし、森林の再生をより早く、より確実に進めることができます。災害の規模が大きいほど、人の手によるサポートが不可欠になります。
少しずつ緑が戻り、再びいのちが息づく場所へ
復旧が進むにつれて、御嶽山の山肌にも少しずつ緑が戻ってきています。植えられた苗木が育ち、そこに再び生き物たちが集まるようになり、森は再びいのちを育む場所へと変わっていきます。その姿を見るたびに、自然の回復力と、復旧に携わる人々の努力の尊さを感じます。
御嶽山の経験から学ぶ。自然と向き合い、未来を守るために
御嶽山の噴火災害と、そこからの森林復旧・再生の取り組みは、私たちに多くのことを教えてくれます。
森林を守ることの重要性を改めて心に刻む
森林は、地球温暖化防止、水源涵養、生物多様性保全、そして災害防止といった、私たちの暮らしにとって欠かせない大切な役割を果たしています。御嶽山の災害は、その森林が一瞬で失われることの恐ろしさと、それによって何が失われるのかを私たちに示しました。森林を守ることの重要性を改めて心に刻みましょう。
自然災害の恐ろしさを忘れず、防災意識を持つ
火山噴火だけでなく、地震、台風、集中豪雨など、日本は自然災害が多い国です。御嶽山の経験から、自然の力の恐ろしさを忘れず、常に防災意識を持って備えることが大切です。
森林復旧や保全活動に関心を持つ、応援する
御嶽山の森林は、まだ復旧の途中にあります。そして、日本には御嶽山以外にも、様々な理由で手入れが必要な森林や、災害からの復旧が必要な森林があります。森林の復旧や保全活動に関心を持ち、自分にできる形で応援することも、未来へ豊かな森林を繋いでいくことに繋がります。
まとめ
御嶽山の噴火災害は、私たちに自然の脅威と、森林が受けた甚大な被害を突きつけました。しかし、悲しみの中にあっても、御嶽山の森林は、自然が持つ回復力と、復旧に尽力する多くの人々の努力によって、着実に再生への道を歩んでいます。
倒木処理から植林へ。危険な現場で作業を続ける方々。山の復旧を願う地域住民の皆さん。そして、少しずつ緑を取り戻していく森の姿。そこには、自然の力強さと、未来への希望があります。
御嶽山の経験から学び、森林が私たちの暮らしにとって、いかに大切であるかを改めて心に刻みましょう。そして、自然災害の恐ろしさを忘れず、防災意識を持ち、森林の復旧や保全に関心を持つこと。それが、この美しい山と豊かな森林を、将来の世代に誇りを持って引き継いでいくために、今私たちにできることではないでしょうか。
御嶽山の森林が、再びいのち輝く豊かな森になる日を願って。そして、日本中の森が健全に育まれ、私たちの暮らしと地球の未来を支え続けてくれるように。